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鈴木輝昭 「ピアノのためのソナチネ」

 新刊ピアノ楽譜のご案内


鈴木輝昭:「ピアノのための ソナチネ ~三善 晃の主題による~」コンサートピアノライブラリー
¥1540(税込)

グレード:上級
演奏時間:約13分

「コンサート・ピアノ・ライブラリー」シリーズ
作曲者が10代終わりから20代初めにかけて書いた作品を、
40年の時を経て全面的に改訂したものです。
師である三善 晃氏に与えられたテーマをもとに作曲された第1楽章、
大学在学中に書き足した第2・3楽章からなります。

習作期のエリクチュール・ソナタをもとにしているものの、
自身も“分岐点となった作品”と評しており、氏の作曲への変わらない姿勢が感じられる
緻密な作品です。

1er Mouvement (第1楽章)―― Allegro
2e Mouvement (第2楽章)―― Largo
3e Mouvement (第3楽章)―― Vivo

<まえがき>

《ソナチネ》は、10代終わりから20代初めにかけて書いた、
  ソナタ形式を伴う3楽章構成の作品である。

1976年当時の私は、作曲家を志して隔週ごとに通う師・三善晃先生のレッスンを中心に
日常が回っていた。
そんな或る日のレッスンの終わりに「次はこれで書いてらっしゃい」と、先生はその場で
ソナタの主題を創ってくださった。冒頭7小節のg-mollのテーマだった。
先生の下で20曲以上のエクリチュール・ソナタを書き、その殆どは不出来だったが、
何故かこの曲は上手く行った。
その事は自分でも自覚し、先生からも評価された。
三善晃とアルバン・ベルクの音像が耳の裡側を駆け巡っていた。

暫く時を経て、桐朋の作曲科在学中に2楽章を書き、さらに学内演奏会で発表するために
3楽章を作曲し、鈴木あずさ氏に献呈した。
作品発表会に間に合わせるために直前に書き上げた3楽章は音の数も夥しく、
良くも悪くも暴風の如く吹き荒れる粗い出来だった。
この3楽章は、その後の作曲の歩みの或る分岐点となった作品だが、
2021年、鈴木あずさ氏リサイタルにおけるプログラムに上り、
約40年の時を経て見直す機会が与えられた。
音はあくまで当時のままとし、現在の意識で全ての楽章に手を加え、改定版とさせていただいた。

作家としての性(さが)には変わるものと変わらないものがある。《ソナチネ》から40年、作曲家として生きて来た今の自分の音と、相共存する世界がそこにはあった。

                                    鈴木輝昭

楽譜担当:荻野